大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和44年(手ワ)2098号 判決

原告 (旧商号株式会社太道相互銀行)株式会社 中京相互銀行

右訴訟代理人弁護士 阿久津英三

被告 畑野清文

右訴訟代理人弁護士 加藤澄蔵

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

〈全部省略〉

理由

一、請求原因第一項の事実の判断はしばらく措き、同第二項の事実、すなわち、被告が訴外関西冷機株式会社(その後関西工業株式会社と商号変更したことは、成立に争いのない乙第二号証により明白)の原告に対する債務を連帯保証したかどうかについて判断する。

右事実が存することについての証拠として原告が提出している〈証拠〉によってもこれを確認することができず、他にこれを認めるに足る的確な証拠がない。却って、〈証拠〉によると、被告が訴外会社の代表取締役に就任・登記されていることも、本件連帯保証人として名を連ねていることも、すべて、訴外藤島初男が、被告の明確な承認なく独断でしたものであることが認められる。

二、右認定事実に徴すれば、原告が請求原因四、(一)、(二)において述べる主張〈註・代理権〉を採用する限りでないことは多言を要しないところであるから、つぎに四、(三)の主張〈表見代理〉について判断する。前項に判示したとおり、被告は訴外藤島に対し、明確な代理権を与えたということができないのであるが――従って、この点において右主張は既に失当ではあるが――仮に被告が同訴外人に対し被告の印顆を預託したことから、なんらかの代理権を与え、同訴外人が代理権限を超えて被告名義の連帯保証をしたとみうるとしても、金融機関たる原告としては、保証極度額が多額で、しかも被告とは一面識もなかったのである(この点は弁論の全趣旨によって認められる)から、単に訴外人が被告の印顆を使用したことや、その言明を軽信するだけでなく、直接被告に照会・確認する等の措置をとるべき注意義務があると解すべきところ、原告の全立証によっても、このような措置ないし調査をした事実が認められず、従って原告には、同訴外人に代理権があると信じたことにつき、重大な過失があるといわねばならないから、表見代理の主張も採用することができない。

三、そうすると、被告が連帯保証したということを前提とする原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却し、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 下出義明)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例